避妊をしなかったり、避妊に失敗してしまったりしたときにはどうしたらいいのでしょうか。アフターピルは、妊娠を阻止する効果が期待できますが、そのためには正しく服用しなければなりません。
アフターピルには2種類あり、それぞれ性交から72時間以内または120時間以内の服用が推奨されています。この時間を過ぎてしまっても、まったく効果がないわけではありません。しかし、できるだけ速やかに服用することで、よりアフターピルの避妊効果を高めることができるでしょう。
この記事では、アフターピルの避妊の仕組みや種類、副作用、服用時の注意点について詳しく解説しています。また、アフターピル服用後の避妊の判定やよくある質問にも回答しています。アフターピルについて知りたい方や服用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
アフターピルとは緊急避妊薬のこと
「ピル」と聞くと、どのような薬を思い浮かべるでしょうか。ピルのうち避妊目的で使われるのは、低用量ピルとアフターピルです。低用量ピルは経口避妊薬(OC)のことで、継続して服用することで排卵を抑制します。一方アフターピルは、緊急避妊薬のことを指します。それぞれの特徴は下記の通りです。
低用量ピル
- 1日1錠服用する
- 排卵の抑制のほか、月経困難症の緩和などにも効果がある
アフターピル
- 緊急避妊法(EC)として使われる
- 避妊をしなかった、または避妊に失敗した性交後に服用する
このように、あらかじめ計画的に避妊をおこなう低用量ピルと、緊急的に用いるアフターピルでは大きく異なります。
アフターピルの避妊効果
緊急避妊薬であるアフターピルは、どの程度の避妊効果があるのでしょう。下記は、一般的におこなわれてきた緊急避妊法であるヤッペ法(Yuzpe法)と、レボノルゲストレル(LNG)を服用したときの妊娠阻止率です。
出典:緊急避妊法の適正使用に関する指針(平成 28 年度改訂版)日本産科婦人科学会 編
国内で取り扱われているアフターピルは、ノルレボ錠(レボノルゲストレル錠やマドンナなど)とエラワン(エラ)の2種類です。
ノルレボ錠(レボノルゲストレル錠)の妊娠阻止率は、性交から24時間以内の服用で95%、48時間以内で85%、72時間以内で58%です。アフターピルを服用するのが遅ければ遅いほど、妊娠阻止率は低くなってしまいます。可能な限り速やかに服用することが大切だと言えるでしょう。
アフターピルが必要なとき
緊急避妊薬であるアフターピルは、性交後に妊娠を回避するために服用するものです。ほかの避妊法や経口避妊薬(OC)のように、性交の前に計画的に避妊をおこなうものとは異なります。
アフターピルは、下記の場合に適応となります。
- 避妊をしなかったとき
- 誤った方法で避妊をおこなったとき
- 避妊をしていたが失敗したとき
具体的には、コンドームの破損・脱落・不適切な使用、膣外射精など不十分な避妊、経口避妊薬(OC)の服用忘れ、性被害にあった場合などです。経口避妊薬(OC)である低用量ピルとは、目的や服用方法が異なるので注意しましょう。
アフターピルはどんな薬?
国内で取り扱われているアフターピルは、ノルレボ錠(レボノルゲストレル錠やマドンナなど)とエラワン(エラ)です。これらは主成分や特徴が違います。
ここでは、ノルレボ錠(レボノルゲストレル錠)とエラワン(エラ)の特徴、またアフターピルの仕組みや副作用について詳しく解説していきます。
アフターピルの仕組み
アフターピルの作用は十分に解明されていませんが、排卵を抑制したり遅らせたりすることによって妊娠を阻止すると考えられています。
そもそも妊娠が成立するには、大きく4つの過程があります。
- 卵巣から卵子が排卵される
- 卵子と精子が出会って受精する
- 受精卵が成長しながら子宮へ移動する
- 受精卵が子宮内膜に着床する
上記のようなプロセスをたどり、着床したところから妊娠がスタートするのです。
また、アフターピルの服用が排卵後だった場合には、受精や受精卵の着床を妨げるといった働きをするとも考えられています。
アフターピルの種類
アフターピルは、国内では2種類の取り扱いがあります。それぞれの特徴は下記の通りです。
商品名 | 主成分 | 特徴 |
ノルレボ錠
レボノルゲストレル錠 マドンナ など |
レボノルゲストレル | 性交後、72時間以内の服用を推奨 |
エラワン
エラ |
ウリプリスタール
酢酸エステル |
性交後、120時間以内の服用で効果が期待できる |
ノルレボ錠(レボノルゲストレル錠やマドンナなど)は、避妊をしなかったまたは避妊に失敗した性交後、72時間以内の服用が推奨されています。できる限り早く服用することで、妊娠阻止率が高くなるのです。
一方、エラワン(エラ)は、性交後120時間以内に服用することで、妊娠を阻止する効果が期待できるとされています。海外の臨床試験では、下記のような結果が出ています。
- 性交後72時間未満の服用では、ノルレボ錠(レボノルゲストレル錠やマドンナなど)と同等の避妊効果がある
- 性交後72時間から120時間までの服用では、ノルレボ錠(レボノルゲストレル錠)より優れた効果がある
いずれにしても、適切な避妊ができなかった場合には、速やかに服用することが大切だと言えるでしょう。
アフターピルの副作用
アフターピルの副作用として、下記の症状が見られます。
商品名 | 副作用 |
ノルレボ錠
レボノルゲストレル錠 |
消退出血、不正出血、頭痛、傾眠、悪心、倦怠感 |
エラワン
エラ |
頭痛、吐き気、倦怠感、腹痛、生理痛、めまい |
アフターピルを服用すると、このような症状が一時的に表れますが、重篤な副作用や持続的な副作用はないとされています。
ただし、悪心や嘔吐がある場合には注意が必要です。アフターピルの服用後に嘔吐してしまうと、十分に効果が得られない可能性があります。この場合には、処方された医療機関に相談しましょう。
アフターピルはどこで買えるの?
アフターピルが必要になった場合、どのような方法で購入すればいいのでしょうか。特に一刻も早く手に入れたいような状況では、マツキヨなどのドラッグストアで買えるのかも気になるところでしょう。
アフターピルは処方箋が必要であり、医師の診察なしでは購入できません(2023年8月現在)。そのため、医療機関で処方してもらいましょう。アフターピルを処方してもらうには、医療機関を直接受診、またはオンライン診療を受診します。
医療機関とオンライン診療の特徴は、下記の通りです。
医療機関
- 対面での診察のため話を聞きやすい
- その場でアフターピルを受け取れる
- 通院にかかる時間や待ち時間を確認しておく必要がある
オンライン診療
- ビデオ通話やチャットなどを通して診察が可能である
- 通院や待ち時間がない
- 郵送のためすぐには受け取れない(最短当日発送のところも)
アフターピルは通販サイトで販売されていることもありますが、必ず医療機関やオンライン診療を受診して処方してもらい、服用するようにしましょう。
アフターピルの服用方法と注意事項
アフターピルにはノルレボ錠(レボノルゲストレル錠)とエラワン(エラ)の2種類があり、それぞれ推奨される服用時間が異なります。ここでは、服用方法と服用時の注意事項を解説していきます。
服用方法
- ノルレボ錠(レボノルゲストレル錠)は、性交後72時間以内に服用
- エラワン(エラ)は、性交後120時間以内に服用
服用時の注意事項
- 決められた用量を守る
- できるだけ早く服用する
アフターピルは、早く服用するほど妊娠阻止率も上がるとされています。しかし、もし服用が遅れてしまっても、自分の判断で多く服用するといったことはやめましょう。できるだけ速やかに受診し処方してもらうことで、性交から服用までの時間も短くなります。
アフターピル服用後の避妊の判定方法
アフターピル服用後、避妊に成功した場合には、ほとんどのケースで消退出血が起こります。この消退出血は、服用後3日~21日ほどで起こるとされていますが、不正出血との判別は難しいでしょう。
いずれにしても、アフターピル服用後3週間以内に生理のような出血があれば、避妊に成功している可能性が高いです。生理が予定より遅れている場合には、妊娠検査薬の使用、もしくは医療機関で診察してもらいましょう。
アフターピル(緊急避妊薬)に関するよくある質問
ここでは、アフターピルに関するよくある質問を3つ紹介します。
- アフターピルはマツキヨなどのドラッグストアで買えるの?
- アフターピルは男性でも買えるの?
- 市販で販売されている薬でアフターピルの代わりになるものはある?
それぞれの質問に回答していきます。
1.アフターピルはマツキヨなどのドラッグストアで買えるの?
アフターピルは処方箋が必要となるため、ドラッグストアでは購入できません(2023年8月現在)。調剤薬局を併設した一部のドラッグストアでは購入可能ですが、この場合にも処方箋が必要となります。アフターピルを購入するには、医療機関を直接受診するか、オンライン診療を受診しましょう。
2.アフターピルは男性でも買えるの?
アフターピルは、男性が購入することはできません。アフターピルは処方箋が必要であり、処方箋の発行には医師の診察が必要です。アフターピルを服用する女性本人が、医師の診察を受ける必要があります。
受診の同伴は可能ですが、産婦人科では男性の同伴が好ましくないケースもあるでしょう。その場合には、オンライン診療の活用もおすすめです。
3.市販で販売されている薬でアフターピルの代わりになるものはある?
市販薬でアフターピルの代わりになるものは、残念ながらありません。アフターピルは処方箋が必要な医薬品であり、市販薬を探しても該当するものはないので注意しましょう。
避妊をしなかった、または避妊に失敗した場合には、速やかに医療機関を受診してアフターピルを処方してもらうことが大切です。
アフターピルによる避妊について正しく知ろう
緊急避妊薬であるアフターピルは、正しく服用することで避妊効果を発揮します。妊娠を望んでいないタイミングで十分な避妊ができなかった場合には、焦ってしまう方も多いでしょう。アフターピルがどのような仕組みでどのような副作用があるかなどを知っておけば、いざというときも安心です。
また、ノルレボ錠は性交後72時間以内、エラワンは性交後120時間以内の服用が推奨されています。服用のタイミングや注意事項も把握しておくと、スムーズな受診につながるでしょう。産婦人科を受診してアフターピルを処方してもらうことに抵抗のある方は、オンライン診療もおすすめです。
当院では、来院・予約一切不要のLINEでの診察もおこなっています。最短即日発送で全国に対応しているので、ぜひご活用ください。
参考サイト・文献
・EPCファクトチェック|#緊急避妊薬を薬局で 緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト
・緊急避妊法の適正使用に関する指針(平成28年改訂版)|日本産科婦人科学会 編
・避妊|日本女性心身医学会
・妊娠はどのように成立するのですか?|日本生殖医学会
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