「エラワン」は、ウリプリスタル酢酸エステルを主成分とする、アフターピル(緊急避妊薬)のひとつです。アフターピルとは、性交時の避妊に失敗した場合や、望まない妊娠の可能性がある場合に服用する薬です。
アフターピルには少なからず副作用が表れる可能性があり、人によって程度や表れる症状は異なります。
本記事では、アフターピルに見られる副作用について、詳しく解説します。併せて、副作用が出たときの対処法やアフターピルを服用する際の注意点なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
アフターピル「エラワン」の副作用|出現頻度別に紹介
「エラワン」を含むアフターピルの副作用は、生理中に見られる症状と似ているものもあり、症状によって出現頻度に差があります。
この章では、出現頻度別に「エラワン」で起こり得る副作用を紹介します(一部割愛)。
出現頻度 | 10人に1人ほどの割合 | 100人に1人ほどの割合 | 1,000人に1人ほどの割合 |
副作用 | ・吐き気
・腹部(胃)の痛みまたは不快感 ・嘔吐 ・生理痛 ・骨盤痛 ・乳房の圧痛 ・頭痛 ・めまい ・気分の変動 ・筋肉痛 ・腰痛 ・疲労感 |
・下痢
・胸やけ ・胃腸内のガス ・口渇 ・異常または不規則な性器出血 ・月経過多 ・長時間の月経前症候群 ・膣の炎症またはおりもの ・性欲の増減 ・ほてり ・食欲の変化 ・情緒障害、不安、興奮 ・睡眠障害、眠気 ・偏頭痛 ・視覚障害 ・ニキビ ・皮膚病変 ・皮膚のかゆみ ・発熱、悪寒、倦怠感 |
・性器の痛みやかゆみ
・性交痛 ・卵巣嚢腫の破裂 ・生理が異常に軽い ・集中力の低下 ・震え ・見当識障害、失神 ・目の異常な感覚、充血、光への過敏性 ・味覚障害 ・蕁麻疹 |
出典:PACKAGE LEAFLET: INFORMATION FOR THE USER ellaOne 30mg tablet ulipristal acetate|Perrigo company
上記の副作用が必ず表れるわけではなく、ほかの何らかの症状が表れる可能性もあります。また、出現頻度はあくまで目安です。
副作用のなかには、乳房の圧痛や腹部(胃)の痛み、嘔吐、吐き気など、妊娠初期に見られる症状と似ているものもあります。エラワンの服用後に生理が遅れたり、上記の症状が表れた場合は、妊娠検査を実施することを推奨します。
「エラワン」による副作用が出た際の対応
「エラワン」の副作用は複数ありますが、そのなかから、吐き気や腹痛・嘔吐・出血が表れた際の対応について解説します。
副作用について不安や不明点がある方は、早めに医師に相談しましょう。
吐き気・腹痛
エラワンを服用してから、吐き気、あるいは腹部や胃部に違和感や痛みを感じる場合があります。吐き気や腹痛の程度は人によってさまざまです。
アフターピルの副作用は一過性であり、多くの場合24時間以内に落ち着くとされています。吐き気や腹痛が表れたら、休息を取り体を休めましょう。
「以前アフターピルを服用して腹痛が出たことがある」「気持ち悪くならないか不安」といった方は、胃腸薬や吐き気止めを一緒に処方してもらえるか、医師に相談してみましょう。また、空腹時には吐き気や腹痛を含む消化器症状が出現しやすくなります。アフターピルを服用する前に、軽く食事をしておくと副作用を軽減できるかもしれません。
嘔吐
エラワンを服用したあとに嘔吐してしまった場合は、服用後3時間以内ならできるだけ速やかにもう1回分を服用しましょう。服用後3時間が経過していれば、薬剤は十分吸収されているといえるため、追加での服用は必要ありません。
嘔吐が持続しアフターピルによる避妊が困難な場合には、銅付加子宮内避妊具などほかの方法が検討されることもあります。早めに医師に相談しましょう。
出血
エラワンをはじめとするアフターピルの副作用では、出血も出現率が高い症状です。
アフターピルを服用すると、生理ではない軽度の出血がしばしば見られます。これは、子宮機能に関わるホルモンへの作用があることが影響していると考えられます。
薬が効いているということでもあるので、出血が見られても不安になることはありません。数日ほどで落ち着くことが多いので、しばらく様子を見てみましょう。
しかし、いつまでも出血がとまらない、出血量が多いなどの症状が見られる場合には注意が必要です。医師に相談することも検討してみましょう。
また、妊娠初期に見られる着床出血でも似た症状が表れます。服用するタイミングが遅かった、服用後に嘔吐してしまったなど不安がある場合には、妊娠検査薬で確実に判断することが大切です。
なお、アフターピルの服用後に表れる出血は、生理やほかの不正出血と区別しやすくするために「消退出血」と呼ぶこともあります。
消退出血については、生理の出血と併せて後ほど詳しく解説します。
「エラワン」を服用しても副作用がないのは避妊失敗なの?
アフターピルの副作用は「出現する可能性がある」との意味合いなので、人によって全く見られないケースもあります。副作用がないからといって、避妊に失敗したというわけではありません。
副作用のひとつ「消退出血」は、避妊に成功した際のサインになるとする説もあります。アフターピルの成分には、出血が起こりやすくなる性質があります。生理ではない出血が見られるケースが多いのも事実です。
しかし、受精あるいは着床が成立しないことを原因に出血するとの実証は見られません。子宮内の環境に変化があるという点から薬の効果が出ているとの見方もできますが、あくまで目安程度に考えておくのがよいでしょう。
「エラワン」以外のアフターピルだと副作用は変わる?
アフターピルの副作用は、薬の種類によって多少異なります。
アフターピルにはエラワン以外にも、レボノルゲストレルを主成分とした「ノルレボ錠」や、ヤッペ法(中用量ピルをはじめに2錠、12時間あけて2錠服用する避妊法)で使用される「プラノバール配合錠」があります。
ここでは、「ノルレボ錠」と「プラノバール配合錠」の副作用をまとめました。
ノルレボ錠
ノルレボ錠の副作用は、以下の通りです。
出現率 | 5%以上 | 0.1~5%未満 | 頻度不明 |
副作用 | ・頭痛(12.3%)
・傾眠 ・消退出血(46.2%) ・不正子宮出血(13.8%) ・悪心 ・倦怠感 |
・浮動性めまい、体位
性めまい ・不安 ・月経過多 ・下腹部痛、腹痛 ・下痢 ・貧血 ・異常感 ・口渇 ・熱感 ・疲労 ・末梢性浮腫 |
・月経遅延
・嘔吐 ・乳房圧痛 |
上記の副作用のうち、出現頻度が高いとされるのは、頭痛や出血です。アフターピルを服用するとホルモンバランスが乱れるため、次の生理が遅れたり量が増えたりする可能性があります。
プラノバール配合錠
プラノバール配合錠はアフターピルではなく中用量ピルですが、避妊法のひとつ「ヤッペ法」に使用される薬です。もともとは月経トラブルの改善に使用されることが多い薬ですが、緊急避妊薬として処方されることもあります。
プラノバール配合錠の重大な副作用として、血栓症があります。出現率は0.1~0.2%未満ですが、発症すると重篤な状態に陥る恐れがあるため、注意が必要です。
以下の症状が見られたら、すぐに医療機関を受診しましょう。
- 下肢の急激な疼痛・腫脹
- 突然の息切れ
- 胸痛
- 激しい頭痛
- 四肢の脱力・麻痺
- 構語障害
- 急性視力障害
上記以外の副作用は、以下の通りです。
出現率 | 0.1~5%未満 | 頻度不明 |
副作用 | ・肝機能の異常
・不正出血(破綻出血、点状出血) ・乳房緊満感 ・浮腫 ・体重増加 ・悪心、嘔吐 ・食欲不振 ・胃痛 ・頭痛 ・眠気 ・倦怠感 ・にきび ・熱感 ・腰痛 ・肩こり ・冷感 |
・黄疸
・経血量の変化 ・おりものの増加 ・乳房痛 ・発疹 ・動悸 ・血圧上昇 ・下痢、便秘 ・腹痛 ・口内炎 ・口渇 ・めまい ・神経過敏 ・色素沈着 ・コンタクトレンズがうまく調節されない |
本来は月経トラブルの改善に使用されるため、これらの症状や頻度は7日~3週間ほど連続投与することが加味されています。しかし緊急避妊を目的に用いられる場合であっても、プラノバール配合錠は、アフターピルと比較して副作用が出やすいとされる薬です。
実際に、アフターピルを服用した人とヤッぺ法を実施した人の副作用出現率には、大きな差があるとのデータがあります。たとえば「悪心」では、レボノルゲストレルを主成分としたアフターピル(ノルレボ錠)を服用した人の出現率は23%なのに対して、ヤッぺ法を実施した人の出現率は51%と、2倍近く差があることがわかります。
こうした安全性に加え有効性の観点から、性交時の避妊に失敗した際の緊急避妊方法では、アフターピルを第一選択とすることが推奨されています。ヤッペ法はほかの方法が適用されない際に検討されることが多いようです。
アフターピルの副作用で見られる「消退出血」と「生理」の違い
エラワンを含むアフターピルの服用後に見られる出血は、消退出血と呼ばれることがあります。
ここでは「消退出血」と「生理」の違いについて解説します。
副作用の頻度として多いとされるのが、生理以外の出血です。消退出血とも呼ばれており、アフターピルを服用した数日後から生理が始まるまでの間に起こります。出血は通常の生理よりも軽く、2~3日ほどで落ち着く場合が多いとされています。
アフターピルを使用すると、半数程度に消退出血が見られるといわれています。症状が表れない、あるいは生理と同時に出現し気づかないケースもあります。
一方生理が来るのは、基本的には予定日の通りとなります。ただし、アフターピルは排卵を遅らせたり阻害したりする作用があり、ホルモンバランスの変化にもつながります。そのため、予定日は前後することが多いといわれています。
平均して、ウリプリスタル酢酸系(エラワン)の薬を使用した後は予定日よりも2日遅く、レボノルゲストレル系(ノルレボ錠)の薬を使用した後は1日早まるとの報告があります。また、レボノルゲストレル系(ノルレボ錠)のアフターピルを服用した約80%以上の女性が、予定日の2日後以内、95%の女性が予定日の7日以内に生理がきたとのデータもあります。
もし予定日を7日過ぎても生理がこない、いつもの生理よりも出血が少ないといったことがあれば、婦人科などの医療機関で受診して、妊娠検査を受けるのがよいでしょう。
アフターピル「エラワン」に関するよくある質問
この章では、アフターピル「エラワン」に関する以下の疑問について解説します。
- アフターピルによる副作用はいつまで続きますか?
- 「エラワン」を服用できない場合はありますか?
- 「エラワン」と飲み合わせがよくない薬はありますか?
- 「エラワン」を含むアフターピル服用後の性交はどうするべきですか?
- 生理が遅れているのですが妊娠していますか?
- アフターピル「エラワン」の避妊成功率はどのくらいですか?
- 「エラワン」はなぜ避妊に効果があるのですか?
ここで解決できない内容に関しては、医師へ相談しましょう。
アフターピルによる副作用はいつまで続きますか?
アフターピルの副作用は一過性であり、多くの場合24時間以内には落ち着くといわれています。そのため副作用が出現した場合には、一日ゆっくりと休むことが大切です。
24時間以上副作用が続く、症状が強くなるなどがあれば、医師に相談しましょう。
「エラワン」を服用できない場合はありますか?
医師が処方するアフターピルは基本的に安全性が高い薬といわれていますが、以下に当てはまる方はエラワンを服用できないことがあります。
- 重篤な肝障害がある
- 重度の喘息がある
- すでに妊娠している可能性がある
- ウリプリスタル酢酸エステルの薬を服用してアレルギーの症状が出たことがある
持病や既往歴がある方は、服用する前に医師へ伝える必要があります。
「エラワン」と飲み合わせがよくない薬はありますか?
「エラワン」を服用する際、飲み合わせに注意が必要な薬があります。
- ほかの避妊薬(低用量ピルなど)や緊急避妊薬(アフターピル)
- てんかんの治療に使用される薬(プリミドン、カルバマゼピンなど)
- 結核の治療に使用される薬(リファンピシン、リファブチンなど)
- HIV の治療薬(リトナビル、エファビレンツ、ネビラピン)
- 真菌感染症の治療に使用される薬(グリセオフルビン)
- セントジョーンズワート(オトギリソウ)を含む漢方薬
上記の薬を服用している場合は、エラワンの効果が最大限発揮されないなどの影響が出ることがあります。さらに、サプリメントでも成分によっては飲み合わせが悪いものがあるため、いつも飲んでいる薬がある場合には、必ず医師に伝えましょう。
「エラワン」を含むアフターピル服用後の性交はどうするべきですか?
アフターピルを服用したあとの性交については、避妊の効果はありません。再度アフターピルを服用する必要があります。しかし100%効果があるというものではないため、正しく避妊をすることが大切です。
あくまでアフターピルは緊急用なので、常用するのはおすすめしません。定期的に避妊効果を期待するのであれは、低用量ピルなどを利用するのがよいでしょう。
生理が遅れているのですが妊娠していますか?
アフターピル服用後、生理が来るのは予定日の通りとされています。しかしアフターピルを服用するとホルモンバランスが乱れるため、予定日よりも遅れることは珍しくありません。
しかし、予定日を7日以上過ぎても生理が来ない、生理が軽いもしくは重い、乳房の圧痛や吐き気などの症状が見られる場合は、妊娠の可能性もあります。一度、妊娠検査をすることをおすすめします。
アフターピル「エラワン」の避妊成功率はどのくらいですか?
アフターピルは薬によって効果の認められている服用時間は異なりますが、どちらにしても早く服用するほど妊娠阻止率が高くなることがわかっています。
エラワンなどのウリプリスタル酢酸エステルは、性交後120時間以内の服用が推奨されている薬です。海外の臨床試験では、性交後72時間以内の服用については、ウリプリスタル酢酸エステルでは1.8%、レボノルゲストレルでは2.6%の人が妊娠していたという結果が出ています。72〜120時間までの服用においては、ウリプリスタル酢酸エステルはレボノルゲストレルよりも高い効果が認められています。
なお、レボノルゲストレル(ノルレボ錠)は、性交後72時間以内の服用が推奨されている薬です。性交後24時間以内に服用することで約95%の妊娠阻止率があるといわれています。また、72時間以内の服用では84%、120時間以内の服用では63%になるとのデータもあります。
アフターピルの服用時間については、「アフターピルは何時間以内の服用が必要?気になる値段や副作用も紹介」でも詳しく解説しています。
「エラワン」はなぜ避妊に効果があるのですか?
アフターピルで妊娠を阻止できる理由として考えられているのは、以下の2つです。
- 排卵の抑制
- 子宮内膜の増殖を抑制(受精卵の着床を阻害)
実際に、排卵前にレボノルゲストレルを主成分とするアフターピルを服用することで、その後5〜7日間排卵が抑制され、正常な排卵過程を阻害したとのデータがあります。子宮内で精子が卵子と結合可能なのは、約3日間、長くとも7日程度であるといわれています。その期間に排卵がなければ受精そのものが成立しないため、妊娠を阻止できるという仕組みです。
さらにアフターピルには、子宮内膜の増殖を抑制する作用もあるとされています。たとえ受精が起こったとしても着床には至らないような働きがあり、妊娠が成立しにくくなると考えられています。
アフターピル「エラワン」の副作用が不安な方は医師に相談しよう
「エラワン」をはじめとするアフターピルには、副作用が表れる可能性があります。症状や程度は人によって異なり、なかには全く見られない方もいます。
副作用についての不安や気になる症状がある方は、早めに医師に相談しましょう。
また、アフターピルの処方には、オンライン診療も選択できます。「病院に行く時間がない」「他人の目が気になる」といった方は、当院のオンライン診療をご利用ください。18時10分までの申し込みで、当日発送の対応が可能です。
参考サイト・文献
・ellaOne30mg tablet ulipristal acetate|Perrigo company
・緊急避妊法の適正使用に関する指針(平成 28 年度改訂版)|日本産科婦人科学会
・ノルレボ錠1.5mg|あすか製薬株式会社
・プラノバール配合錠|あすか製薬株式会社
・Randomised controlled trial of levonorgestrel versus the Yuzpe regimen of combined oral contraceptives for emergency contraception. Task Force on Postovulatory Methods of Fertility Regulation
・ECPファクトチェック|厚生労働省
・Pituitary-ovarian function following the standard levonorgestrel emergency contraceptive dose or a single 0.75-mg dose given on the days preceding ovulation|H B Croxatto 1, V Brache, M Pavez, L Cochon, M L Forcelledo, F Alvarez, R Massai, A Faundes, A M Salvatierra|National Library of Medecine
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