【要休職】その吐き気、不安障害かも?原因・症状・治し方を徹底解説!


吐き気と不安、この二つが同時に起きるとき、「なぜだろう」「何か病気なのだろうか」と不安が増してしまいますね。もしかしたら、その吐き気は精神的なもの、特に不安障害に関連しているかもしれません。身体的な原因が見当たらないのに、繰り返し吐き気に襲われる場合、心の状態が大きく影響している可能性があります。

この記事では、不安障害がなぜ吐き気を引き起こすのか、そのメカニズム、具体的な症状、そしてご自身でできる対処法から医療機関での治療法まで、詳しく解説します。つらい吐き気と不安に悩むあなたが、少しでも楽になるためのヒントを見つけられるよう、医師監修のもと、根拠に基づいた情報を提供します。一人で抱え込まず、まずは現状を理解することから始めてみましょう。

目次

不安障害による吐き気とは?

a young woman feels discomfort in her throat - 吐き気 ストックフォトと画像

不安障害による吐き気は、器質的な病気(胃腸炎や食中毒など、身体に物理的な異常がある病気)が原因ではないにも関わらず、強い不安やストレスを感じた際に生じる消化器系の不調の一つです。これは「心因性(しんいんせい)」や「機能性(きのうせい)」の吐き気とも呼ばれ、心の状態が身体に影響を与えている典型的な例と言えます。

不安障害は、日常生活に支障をきたすほどの過度な不安や心配が続く精神疾患の総称です。特定の状況に対する強い恐怖(社交不安障害、広場恐怖など)、特定の対象への恐怖(恐怖症)、予期しないパニック発作(パニック障害)、漠然とした過剰な心配(全般性不安障害)、過去のトラウマ体験に関連する不安(PTSD)、特定の強迫観念と強迫行為(強迫性障害)など、様々なタイプがあります。

不安障害による吐き気は、これらの不安障害を持つ人によく見られる身体症状の一つです。不安が高まる場面や、特に理由もなく漠然とした不安を感じている時に出現することがあります。単に「気持ち悪い」と感じる程度から、実際に嘔吐してしまうこともあり、その程度は人によって大きく異なります。

このタイプの吐き気は、検査をしても胃や腸に異常が見つからないことがほとんどです。しかし、だからといって症状が軽いわけではありません。日常生活、例えば通勤中の電車、職場、学校、外出先など、様々な場面で突然吐き気に襲われる可能性があるため、常に不安を抱え、QOL(生活の質)が著しく低下してしまうことも少なくありません。

なぜ不安障害で吐き気が起きるのか?

不快に感じる女性 - 吐き気 ストックフォトと画像

不安障害が吐き気を引き起こすメカニズムは複雑ですが、主に「精神的な緊張と自律神経の乱れ」、「ストレスホルモンの影響」、「パニック発作との関連性」が深く関わっています。これらは互いに影響し合い、身体、特に消化器系に様々な不調をもたらします。

精神的な緊張と自律神経の乱れ

強い不安や精神的な緊張を感じると、私たちの体はストレス反応として「闘争・逃走反応」のスイッチを入れます。これは、危険から身を守るために、心拍数を上げ、血圧を上昇させ、筋肉を緊張させるなど、体を活動モードにするための原始的な反応です。

この反応をコントロールしているのが自律神経系です。

自律神経は、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経の二つから成り立っており、通常はこの二つの神経がバランスを取りながら、内臓の働きや血圧、体温などを調整しています。

しかし、不安障害の人は、常に過剰な不安や緊張を抱えているため、交感神経が優位になりやすい状態が続きます。交感神経が優位になると、胃や腸といった消化器系の働きは抑制されます。これは、緊急時には消化活動よりも生命維持に必要な活動(逃げる、戦うなど)にエネルギーを回す必要があるためです。

胃の動きが遅くなったり、腸の蠕動(ぜんどう)運動が乱れたりすると、食べたものがうまく消化・吸収されず、胃の中に停滞しやすくなります。この状態が、吐き気や胃もたれ、腹痛といった症状として現れるのです。また、副交感神経の働きが抑制されることで、唾液の分泌が減り、口の中が渇くこともあります。これは直接的な吐き気とは異なりますが、消化活動の初期段階に影響を与え、不快感につながることがあります。

加えて、自律神経の乱れは、食道と胃の境目にある下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)の働きにも影響を与える可能性があります。この筋肉は通常、胃の内容物が食道へ逆流するのを防ぐ役割をしていますが、自律神経のバランスが崩れると、適切に機能しなくなり、胃酸が食道に逆流して吐き気や胸やけを引き起こすこともあります。

ストレスホルモンの影響

不安やストレスを感じると、私たちの体は脳の視床下部(ししょうかぶ)からの指令を受けて、副腎(ふくじん)からコルチゾールなどのストレスホルモンを分泌します。これらのホルモンは、一時的に体を活動的にするために必要なものですが、慢性的に高いレベルで分泌され続けると、全身の様々な機能に悪影響を及ぼします。

消化器系においても、ストレスホルモンは様々な影響を与えます。例えば、コルチゾールは胃酸の分泌を増やしたり、胃の粘膜を保護する物質の生成を妨げたりすることが知られています。これにより、胃の炎症が起きやすくなったり、既存の胃炎や胃潰瘍が悪化したりする可能性があります。炎症や粘膜の損傷は、吐き気の直接的な原因となり得ます。

また、ストレスホルモンは腸の動きにも影響を与えます。人によっては腸の動きが過剰になりすぎて下痢を引き起こすこともあれば、逆に抑制されて便秘になることもあります。このような腸の機能異常も、腹部の不快感やそれに伴う吐き気につながることがあります。

さらに、脳と腸は密接に連携しており、「脳腸相関(のうちょうそうかん)」と呼ばれています。ストレスホルモンを含む脳からのシグナルは、腸の神経系(腸管神経系)に直接影響を与え、腸の動きや分泌、さらには腸内環境にも変化をもたらします。この脳腸相関の乱れも、不安による吐き気やその他の消化器症状の重要な原因と考えられています。

パニック発作との関連性

パニック障害は不安障害の一種であり、予期しないタイミングで突然、強い不安や恐怖とともに様々な身体症状が現れるパニック発作を特徴とします。パニック発作の典型的な症状の一つに、吐き気や腹部の不快感があります。

パニック発作は、体が一気に「闘争・逃走反応」の状態になることで引き起こされます。この時、交感神経が極度に優位になり、心臓がドキドキしたり、息苦しくなったり、めまいを感じたりといった症状とともに、胃腸の働きが急激に抑制されます。この急激な胃腸機能の低下や、全身の異常な緊張状態が、強い吐き気や嘔吐感として自覚されるのです。

パニック発作中の吐き気は、非常に苦痛を伴い、「このまま倒れてしまうのではないか」「死んでしまうのではないか」という恐怖をさらに強める要因となります。発作が治まると症状は落ち着くことが多いですが、またいつ吐き気に襲われるかという予期不安(よきふあん)が生まれ、それがさらなるパニック発作や日常生活への支障につながる悪循環を生むことがあります。

パニック障害による吐き気は、文字通り「不安がピークに達した結果」として現れる身体症状であり、その背後には前述した自律神経やストレスホルモンの影響が複合的に関わっています。

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不安障害による吐き気の具体的な症状

心の痛みを持つ若い女性 - 吐き気 ストックフォトと画像

不安障害による吐き気は、単に「気持ちが悪い」という感覚に留まらず、様々な形で現れます。また、吐き気だけでなく、他の身体症状を伴うことも少なくありません。

吐き気の感じ方は人それぞれですが、一般的には以下のような特徴が見られます。

  • 食後や空腹時に関わらず発生する: 食事の内容やタイミングとは無関係に、不安や緊張を感じたときに突然現れることがあります。
  • 特定の状況で悪化する: 人前に出る、電車やバスに乗る、閉鎖空間にいるなど、特定の不安を感じやすい状況で吐き気が強まる傾向があります。
  • 精神状態と連動する: 不安が強い時や、特定の出来事を思い出した時に吐き気がしたり、リラックスすると軽減したりします。
  • 検査では異常が見つからない: 医療機関で胃カメラや血液検査などを受けても、吐き気の原因となるような身体的な異常が見つからないことが多いです。
  • 実際に嘔吐することは稀な場合も: 強い嘔吐感を伴いますが、実際に吐いてしまうケースは比較的少ないこともあります。ただし、パニック発作時などは実際に嘔吐するケースも見られます。

吐き気以外の身体症状

不安障害を持つ人は、吐き気以外にも様々な身体症状を経験することがよくあります。これらの症状は、不安やストレスによって引き起こされる自律神経の乱れや筋肉の緊張などに関連しています。

不安障害に伴う代表的な身体症状には、以下のようなものがあります。

  • 動悸・頻脈: 心臓がドキドキする、脈が速くなる。
  • 息苦しさ・過呼吸: 呼吸が浅く速くなる、息を吸い込めない感じ。
  • めまい・ふらつき: 立ちくらみや体が不安定な感じ。
  • 発汗: 手のひらや脇の下などに異常に汗をかく。
  • 体の震え: 手や足が震える。
  • 手足のしびれ・冷え: 血行不良や過換気によるもの。
  • 筋肉の緊張・痛み: 肩こり、首こり、頭痛(緊張型頭痛)。
  • 胃腸の不調: 吐き気以外に、腹痛、下痢、便秘、胃もたれ、膨満感など。
  • 倦怠感・疲労感: 体がだるく、疲れやすい。
  • 睡眠障害: 寝つきが悪い、夜中に目が覚める、熟睡できない。
  • 口の渇き: 唾液分泌の低下。

これらの身体症状は、不安やストレスのサインとして現れます。吐き気とともに複数の症状が現れることも多く、体全体が不調であると感じやすくなります。

パニック障害の症状との比較

不安障害の中でも、特にパニック障害の症状は身体症状が顕著であり、吐き気もその中心的な症状の一つとなり得ます。パニック障害の診断基準(DSM-5など)には、パニック発作の症状として「悪心または腹部の不快感(吐き気や胃のむかつき、お腹の違和感)」が挙げられています。

パニック発作時の症状は、前述したように、心拍数の増加、発汗、体の震え、息切れ感、胸痛または胸部の不快感、悪心または腹部の不快感、めまいまたはふらつき、寒気または熱感、しびれまたはうずき感、現実感喪失または離人感、コントロールを失うことへの恐れ、死ぬことへの恐れ、といった13の症状のうち、4つ以上が突然現れ、急速にピークに達する(通常10分以内)と定義されています。

症状項目 不安障害全般による吐き気 パニック障害(パニック発作時)の吐き気
発症のタイミング 不安や緊張を感じた時 予期しない突然の発作時
症状の出現速度 徐々に強まる場合も 突然現れ、急速にピークに達する
症状の強度 幅広い(軽度~強い) 非常に強い
随伴症状 様々な身体症状 典型的な13症状のうち複数
持続時間 不安が続く間は続くことも 発作中は短時間(通常数分~30分以内)
身体的異常の有無 見られないことが多い 見られないことが多い
嘔吐の有無 少ない場合も 可能性あり
予期不安の有無 ある場合も 発作後に生じやすい

このように、パニック障害における吐き気は、突然かつ非常に強い身体症状群の一つとして現れる点が特徴です。他の不安障害における吐き気も同様に精神的な原因によるものですが、パニック発作ほど急激で激しい症状を伴わない場合もあります。どちらの場合も、精神的な状態と身体症状が強く結びついている点が共通しています。

不安障害による吐き気の対処法

喉に違和感を感じそうな若い女性 - 吐き気 ストックフォトと画像

不安障害による吐き気を軽減するためには、原因となっている不安やストレスそのものにアプローチすることが重要です。同時に、吐き気というつらい症状に対して、その場でできる対処法を知っておくことも役立ちます。対処法には、ご自宅で気軽に行えるセルフケアと、緊急時の応急処置があります。

自宅でできるセルフケア

日頃からセルフケアを取り入れることで、不安を和らげ、自律神経のバランスを整え、吐き気が起きにくい心身の状態を作ることができます。

呼吸法・リラクゼーション

不安を感じているときは、呼吸が浅く速くなりがちです。意識的にゆっくりとした深い呼吸を行うことで、副交感神経を優位にし、リラックス効果を高めることができます。

  • 腹式呼吸: 椅子に座るか横になり、お腹に手を当てます。鼻からゆっくりと息を吸い込み、お腹が膨らむのを感じます。口をすぼめ、吸うときの倍くらいの時間をかけてゆっくりと息を吐き出します。これを数回繰り返します。
  • 漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう): 体の各部位の筋肉を意識的に緊張させ、その後一気に力を抜くことを繰り返す方法です。例えば、手を強く握り数秒キープし、一気に緩めます。これを腕、肩、首、顔、背中、お腹、足など全身で行います。体の緊張が和らぎ、リラックス効果が得られます。
  • 瞑想(マインドフルネス): 静かな場所で座り、目を閉じるか半開きにします。自分の呼吸や体の感覚、周囲の音などに意識を向け、雑念が浮かんできても批判せず、ただ観察します。判断を加えずに「今、ここ」に意識を集中することで、不安な気持ちから距離を置く練習になります。

気分転換・軽い運動

不安な考えにとらわれている状態から抜け出すために、意識的に気分転換を図ることも大切です。

  • 趣味や好きなことに没頭する: 音楽を聴く、読書をする、絵を描く、ゲームをするなど、自分が楽しめることに集中する時間を持つことで、不安から注意をそらすことができます。
  • 自然と触れ合う: 公園を散歩する、植物を育てるなど、自然の中に身を置くことで心が落ち着く効果が期待できます。
  • 軽い運動: ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど、無理のない範囲での軽い運動は、自律神経のバランスを整え、ストレス解消に役立ちます。また、適度な疲労感は睡眠の質を高める効果も期待できます。激しい運動は逆に交感神経を刺激しすぎる可能性があるため、ご自身の体調に合わせて行いましょう。

食事・水分補給

胃腸への負担を減らし、体の調子を整える食生活も重要です。

  • 消化の良いものを摂る: 脂っこいもの、刺激物、カフェイン、アルコールなどは胃腸への負担が大きいので控えめにします。うどん、お粥、温野菜、白身魚など、消化の良いものを中心に摂りましょう。
  • 少量ずつ頻回に: 一度に大量に食べず、少量ずつ回数を分けて食べることで、胃への負担を減らすことができます。
  • 十分な水分補給: 吐き気があるときは脱水しやすいので、水やお茶、OS-1などの経口補水液でこまめに水分を補給しましょう。ただし、冷たい飲み物は胃を刺激することがあるため、常温か温かいものがおすすめです。
  • バランスの取れた食事: 特定の食品に偏らず、ビタミンやミネラルを含む多様な食品をバランス良く摂ることで、体全体の調子を整えます。特に、セロトニン生成に関わるトリプトファンを含む食品(牛乳、チーズ、大豆製品など)や、マグネシウム、ビタミンB群なども自律神経の調整に役立つと言われています。

緊急時の応急処置

吐き気が起きてしまったときに、その場でできる応急処置を知っておくと、少しでも症状を和らげることができます。

  • 楽な姿勢をとる: 座っている場合は椅子に寄りかかる、可能であれば横になるなど、体が楽になる姿勢をとります。ベルトを緩めるなど、体を締め付けているものを解放するのも良いでしょう。
  • ゆっくりと深呼吸をする: 前述の腹式呼吸など、意識的にゆっくりと深い呼吸を行います。パニックになりそうな気持ちを落ち着かせるのに役立ちます。
  • 冷たいタオルを首筋や額に当てる: 首筋や額を冷やすことで、リラックス効果が得られることがあります。
  • 水分を少量ずつ摂る: 口の中の不快感を和らげ、脱水を防ぐために、水や氷を少量ずつ口に含みます。一気に飲むと逆に吐き気を誘発することがあります。
  • 飴やガムを口にする: ミント系の飴やガムは、口の中をリフレッシュさせ、吐き気を紛らわせる効果があると感じる人もいます。
  • ツボを押す: 吐き気に効くとされるツボに刺激を与えることも試せます。例えば、手首の内側、手首のシワから指3本分ひじ側にある「内関(ないかん)」というツボは、乗り物酔いや吐き気に効果があると言われています。

これらの応急処置は、あくまで一時的に症状を和らげるためのものです。根本的な不安障害の治療には、専門的なアプローチが必要です。

病院での診断と治療法

質問をする白衣の医療関係者 - クリニック ストックフォトと画像

不安障害による吐き気が日常生活に支障をきたしている場合や、セルフケアだけでは改善が見られない場合は、専門の医療機関を受診することを検討しましょう。医師による適切な診断と治療を受けることが、症状の改善と再発予防につながります。

受診を検討すべき目安

以下のような場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

  • 吐き気が頻繁に起こり、つらい: ほぼ毎日、あるいは週に数回など、頻繁に吐き気に悩まされている。
  • 吐き気のために外出や仕事、学業に支障が出ている: 電車に乗れない、会議に出られない、学校に行けないなど、日常生活が困難になっている。
  • 吐き気以外の身体症状(動悸、息苦しさ、めまいなど)も伴う: 複数の身体症状があり、体調が全体的に悪いと感じる。
  • 「何か重大な病気なのではないか」という不安が強い: 身体的な病気を心配しすぎて、さらに不安が増している。
  • セルフケアを試しても改善が見られない: 自分でできることを試したが、症状が良くならない。
  • 症状が悪化傾向にある: 時間の経過とともに症状が重くなっている。

これらの目安に当てはまる場合は、一人で悩まず専門家へ相談することが大切です。

診断方法

病院では、まず問診を行います。現在の症状(いつから、どのような状況で、どのくらいの強さかなど)、既往歴(過去にかかった病気)、服用中の薬、アレルギー、生活習慣、ストレス状況、家族歴などを詳しく聞かれます。

吐き気の原因が身体的な病気ではないことを確認するために、必要に応じて血液検査や胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)、腹部超音波検査などの検査が行われることがあります。これらの検査で異常が見つからない場合に、心因性の吐き気、不安障害に関連する吐き気である可能性が高まります。

精神的な側面については、精神科医や心療内科医が詳細な問診を行います。不安を感じる状況、不安の強さ、思考パターン、感情、行動、睡眠状態などについて聞き取り、不安障害の診断基準(DSM-5など)に照らし合わせて診断を行います。心理検査(質問紙法など)が行われることもあります。

診断は、これらの情報(問診、身体検査の結果、心理検査の結果など)を総合的に判断して行われます。不安障害の診断が確定すれば、それに合わせた治療計画が立てられます。

薬物療法 (抗不安薬、吐き気止めなど)

不安障害の治療には、薬物療法と精神療法が用いられます。吐き気という身体症状に対しては、対症療法として吐き気止めが処方されることもありますが、根本的には原因である不安障害を治療するための薬が中心となります。

不安障害の治療に用いられる主な薬には、以下のようなものがあります。

  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI): 不安障害の治療において第一選択薬とされることが多いタイプの薬です。脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きを調整し、不安や抑うつ気分を和らげます。効果が出るまでに数週間かかることがありますが、依存性が少なく、比較的安全に使用できます。代表的なものに、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、エスシタロプラムなどがあります。
  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI): SSRIと同様に、セロトニンとノルアドレナリンの両方の働きを調整します。SSRIで効果が不十分な場合などに用いられることがあります。代表的なものに、ベンラファキシン、デュロキセチンなどがあります。
  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬: 即効性があり、強い不安やパニック症状を一時的に抑える効果があります。発作時や症状が特に強い時期に頓服(とんぷく)として使用されることが多いです。ただし、長期連用すると依存性や耐性(効きにくくなること)が生じるリスクがあるため、漫然とした使用は避けるべきとされています。代表的なものに、アルプラゾラム、ロラゼパム、ジアゼパムなどがあります。
  • 三環系抗うつ薬: 古くから使用されている抗うつ薬ですが、不安障害にも効果があります。副作用が出やすい場合があるため、近年ではSSRIやSNRIが優先されることが多いです。代表的なものに、クロミプラミンなどがあります。
  • アザピロン系抗不安薬: ベンゾジアゼピン系とは異なる作用機序を持つ抗不安薬です。効果が出るまでに時間がかかりますが、依存性のリスクが低いとされています。代表的なものに、タンドスピロンなどがあります。
  • 吐き気止め: 吐き気そのものがつらい場合に、一時的に症状を和らげる目的で処方されることがあります。自律神経の働きを調整するタイプの薬などが用いられることがあります。

薬物療法は医師の指示に従って正しく服用することが非常に重要です。勝手に量を増やしたり減らしたり、中断したりせず、効果や副作用について医師とよく相談しましょう。

精神療法 (認知行動療法など)

不安障害の治療において、薬物療法と同様に、あるいはそれ以上に重要な役割を果たすのが精神療法です。特に認知行動療法(CBT)は、不安障害に対して最も効果が証明されている治療法の一つです。

  • 認知行動療法(CBT): 不安や不調の原因となっている「ものの見方(認知)」や「行動パターン」に働きかけ、それらをより現実的で柔軟なものに変えていくことを目指す治療法です。例えば、不安になると「何か悪いことが起きるに違いない」と catastrophizing(破局的な考え方)をしてしまう認知パターンや、不安を避けるために特定の状況を避けてしまう行動パターンを修正していきます。
    • 不安階層表の作成と曝露療法: 苦手な状況をリストアップし、不安の度合いに応じて段階付けます。そして、不安がより少ない状況から順番に、実際にその状況に身を置いて(曝露)、不安に慣れていく練習をします。これにより、不安を感じても実際には恐れていたような悪いことは起きない、あるいは対処できることを学習します。
    • 認知再構成: 不安な気持ちが湧いたときに頭に浮かぶ考え(自動思考)を特定し、それが客観的な事実に基づいているのか、別の見方はできないのかを検証します。より現実的で建設的な考え方に変えていく練習をします。
    • 行動実験: 自分の考えや予測(例えば、「人前で話すと必ずひどい失敗をする」)が本当に正しいのかを検証するために、意図的に特定の行動(例えば、短い挨拶をしてみる)を行ってみることで、新しい経験や情報を得るアプローチです。
  • 他の精神療法:
    • 対人関係療法(IPT): 対人関係の問題が心の不調に影響している場合に、その問題に焦点を当てて解決を目指す療法です。
    • 支持的精神療法: 患者さんの話を傾聴し、共感し、安心感を与えることで、精神的な安定を図る療法です。

精神療法は、心理士などの専門家と協力しながら進めていきます。回数を重ねることで効果が現れてくるため、根気強く取り組むことが大切です。薬物療法と精神療法を組み合わせることで、より高い治療効果が得られることもあります。

治療法 概要 主な効果 特徴
薬物療法 脳内の神経伝達物質のバランスを調整する薬を服用する 不安、抑うつ気分、身体症状の軽減 即効性があるものもあるが、効果が出るまで時間がかかる薬もある。副作用のリスク、依存性のリスクに注意。
精神療法 不安の原因となる認知や行動パターンを変える、心の働きを調整する 不安への対処能力向上、問題解決スキルの獲得、ものの見方の変化 効果が現れるまでに時間がかかるが、根本的な解決につながりやすい。再発予防効果も期待できる。
認知行動療法 不安な思考や行動パターンを特定・修正する 不安の軽減、回避行動の改善、自己肯定感の向上 構造化されたアプローチで、不安障害に効果が証明されている。
曝露療法 苦手な状況に段階的に慣れていく練習 不安の低減、回避行動の克服 特定の恐怖や回避行動が強い場合に有効。
支持療法 医師や心理士が傾聴し、共感・サポートする 安心感、精神的な安定、自己理解の深化 どのような状態の患者さんにも行える基本的な療法。

どの治療法が最適かは、不安障害のタイプや症状の重さ、患者さんの状況などによって異なります。医師とよく相談し、ご自身に合った治療法を見つけていくことが大切です。

不安障害による吐き気で困ったら?

患者に症状を説明する男性医師の手 - クリニック ストックフォトと画像

不安障害による吐き気は、非常に苦痛を伴い、一人で抱え込んでいると症状が悪化したり、うつ病などの他の精神疾患を併発したりするリスクもあります。つらいと感じたら、遠慮なく専門家に助けを求めましょう。

何科を受診すべきか

吐き気の原因が不安障害にある可能性が考えられる場合、主に以下の診療科を受診するのが適切です。

  • 心療内科: ストレスや心理的な問題が原因で身体症状が現れている場合を専門に診る診療科です。不安による吐き気は、まさに心療内科の専門領域と言えます。
  • 精神科: 心の病気を専門に診る診療科です。不安障害そのものの診断と治療を行います。吐き気という身体症状だけでなく、背景にある不安やその他の精神症状も含めて総合的に診察してくれます。
  • 精神科・心療内科: 両方の名称を掲げているクリニックや病院も多くあります。どちらを受診しても、適切な診断と治療が期待できます。

まずはこれらの診療科を探して受診するのが良いでしょう。もし、心療内科や精神科に行くことに抵抗がある場合は、かかりつけの内科医に相談してみるのも一つの方法です。内科医が身体的な原因を調べた上で、必要であれば心療内科や精神科を紹介してくれることもあります。

受診を迷う場合は、地域の精神保健福祉センターや保健所の相談窓口に問い合わせてみるのも良いでしょう。適切な医療機関や相談先について情報を提供してもらえます。

専門家への相談

医療機関での医師による診断・治療と並行して、あるいは治療の一環として、心理の専門家である臨床心理士や公認心理師に相談することも非常に有効です。

  • 臨床心理士・公認心理師: 心の問題に関する専門的な知識や技術を持ち、カウンセリングや心理療法を行います。前述した認知行動療法などの精神療法を主導するのは、これらの心理士であることが多いです。医師による診断や薬物療法と連携しながら、精神療法を通して不安への対処スキルを身につけたり、ストレスの原因を探り、対処法を一緒に考えたりしてくれます。医療機関に勤務している場合もあれば、民間のカウンセリングルームで活動している場合もあります。

病院の医師に相談して、信頼できる心理士を紹介してもらうのがスムーズでしょう。また、学校のスクールカウンセラーや、職場の産業カウンセラーに相談できる場合もあります。

一人で抱え込まず、「つらい」という気持ちを言葉にして誰かに伝えること自体が、大きな一歩となります。専門家は守秘義務を負っており、あなたのプライバシーは守られますので、安心して相談してください。

よくある質問 (Q&A)

患者の脳検査の結果について話す医師 - クリニック ストックフォトと画像

不安障害による吐き気について、患者さんからよく聞かれる質問とその回答をまとめました。

不安で吐き気がするのは精神症状ですか?

いいえ、不安で吐き気がするのは身体症状(しんたいしょうじょう)です。不安やストレスといった精神的な要因が、自律神経やホルモンのバランスを乱し、胃腸の働きに影響を与えることで、実際に体に吐き気という症状が現れます。これは「心身症」や「機能性身体症状」と呼ばれる状態の一つであり、心と体が密接に関わり合っている証拠です。決して「気のせい」や「甘え」ではなく、治療が必要な症状です。

心因性の吐き気を自分で治すには?

心因性の吐き気を完全に「自分で治す」ことは難しい場合がありますが、症状を軽減させたり、QOLを高めたりするために自分でできることはたくさんあります。前述の「自宅でできるセルフケア」で紹介した方法が有効です。

  • リラクゼーション: 腹式呼吸、筋弛緩法、瞑想などで心身の緊張を和らげる。
  • 気分転換: 趣味や軽い運動で不安から意識をそらす。
  • 生活習慣の改善: バランスの取れた食事、十分な睡眠、規則正しい生活。
  • ストレス管理: ストレスの原因を特定し、対処法を考える練習。
  • 思考パターンの見直し: 不安を強める考え方(認知)に気づき、修正する練習(認知行動療法のセルフヘルプ)。

ただし、これらのセルフケアで症状が改善しない場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合は、専門家(医師や心理士)に相談することが最も重要です。無理に一人で解決しようとせず、専門家の力を借りることも「自分で治す」ための一歩です。

不安障害だとわかる方法は?

ご自身で「私は不安障害だ」と確定的に診断することはできません。不安障害の診断は、精神科医や心療内科医による専門的な診察に基づいて行われます。

診断では、まず問診で現在の症状、病歴、生活状況などを詳しく聞き取ります。次に、国際的な診断基準(DSM-5など)に照らし合わせて、症状の種類、重症度、持続期間などを評価します。必要に応じて、身体的な病気がないか確認するための検査や、不安の程度を測る心理検査なども行われます。

ご自身で不安障害の可能性を疑う「手がかり」としては、以下のような点があります。

  • 過度な不安や心配が長く続いている。
  • 心配をコントロールするのが難しいと感じる。
  • 不安に伴う身体症状(吐き気、動悸、息苦しさ、めまいなど)がある。
  • 不安や身体症状のために、仕事、学校、人間関係、趣味など、日常生活に支障が出ている。
  • 不安を感じる特定の状況を避けるようになっている(例:吐き気が怖いから電車に乗らない、人前に出ない)。

これらの項目に複数当てはまる場合は、一度専門医に相談してみることをおすすめします。医師との対話を通して、ご自身の状態を正しく理解することができます。

【まとめ】吐き気 不安障害に悩んだら専門家へ相談を

医療施設で働く白衣の女性 - クリニック ストックフォトと画像

不安障害による吐き気は、精神的なストレスや不安が原因で起こる、つらい身体症状です。自律神経の乱れやストレスホルモンの影響、あるいはパニック発作の一部として現れることがあります。身体的な検査では異常が見つからないことが多いですが、決して「気のせい」ではなく、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。

吐き気以外にも、動悸、息苦しさ、めまい、胃腸の不調など、様々な身体症状を伴うこともあります。これらの症状に悩んでいる場合は、一人で抱え込まず、適切な対処法を知り、必要であれば専門家の助けを求めることが大切です。

ご自宅でできるセルフケアとしては、呼吸法やリラクゼーション、軽い運動、バランスの取れた食事などが有効です。また、急な吐き気に襲われたときの応急処置を知っておくことも安心につながります。

しかし、セルフケアだけでは改善しない場合や、症状が重く日常生活に支障が出ている場合は、心療内科や精神科を受診することをおすすめします。医師による診断のもと、薬物療法(SSRIなどの抗不安薬)や精神療法(認知行動療法など)によって、不安障害そのものとそれに伴う吐き気を治療することが可能です。

不安障害による吐き気は、適切な治療によって改善が見込める症状です。つらい症状に悩んでいる方は、遠慮なく専門家にご相談ください。

免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、特定の治療法や医療機関を推奨するものではありません。記事中の情報は一般的な知識であり、個々の症状や状況に対する医学的な診断や治療のアドバイスに代わるものではありません。ご自身の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。

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