「エラワン」はアフターピル(緊急避妊薬)のひとつで、性交時の避妊に失敗した場合や、望まない妊娠の可能性がある場合に服用する薬です。性交後できるだけ早い服用が推奨されており、服用までの時間が短いほど妊娠を回避できる可能性が高くなるとされています。
本記事では、アフターピル「エラワン」の避妊率について詳しく解説します。ほかのアフターピルとも比較していますので、どの薬を処方してもらうか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
エラワンとは?服用時間と避妊率
「エラワン」は、ウリプリスタル酢酸エステルを主成分とするアフターピル(緊急避妊薬)です。性交後なるべく早い服用が推奨されており、遅くても120時間以内の服用がよいとされています。
アフターピルの成分として、ウリプリスタル酢酸エステルと並んでよく知られているのが、レボノルゲストレルです。
この2つについて、避妊効果を比較した海外の臨床試験があります。この試験では、性交後72時間以内の服用では同等の避妊効果でしたが、72〜120時間までの服用においては、ウリプリスタル酢酸エステルのほうが高い効果が期待できることが示されています。
また、ウリプリスタル酢酸エステルを服用した場合の妊娠率は、48~72時間までの服用で2.3%、72~96時間までの服用で2.1%、96~120時間までの服用で1.3%という結果になっています。時間の経過とともに有効性に大きな違いは見られなかったという点は、注目すべき特徴だといえるでしょう。
アフターピル「エラワン」以外の緊急避妊薬の避妊率
アフターピルは、エラワン以外にも種類があります。
この章では、「レボノルゲストレル」と「ヤッぺ法」の避妊率について解説します。
レボノルゲストレル
レボノルゲストレルは「マドンナ」や「ノルレボ錠」などのアフターピルの主成分で、性交後72時間以内の服用が推奨されています。
レボノルゲストレルは、性交後24時間以内に服用することで約95%の妊娠阻止率があるといわれています。また、72時間以内の服用で84%、120時間以内の服用で63%と、時間とともに妊娠阻止率が低下することがわかっています。
ヤッペ法
出典:緊急避妊法の適正使用に関する指針|平成28年9月日本産科婦人科学会 編
ヤッぺ法での妊娠阻止率は、性交後24時間以内の服用で77%、25~48時間の服用で36%、49~72時間の服用で31%とのデータがあります。レボノルゲストレルのアフターピルよりも、避妊率は低いことがわかります。
ヤッペ法とは、中用量ピルを2回に分けて服用する緊急避妊法です。ノルゲストレルとエチニルエストラジオールを含有する薬(中用量ピル)を、性交後72時間以内に2錠、さらに12時間あけて2錠服用します。ヤッぺ法で使用される薬は、「プラノバール配合錠」が代表的です。プラノバール配合錠は、もともとは月経トラブルの改善などを目的として使用される薬ですが、緊急避妊薬としても用いられます。
さらにヤッぺ法は、アフターピルに比べて副作用が出やすいとされています。
ヤッぺ法の副作用については、「「エラワン」を含むアフターピルの副作用と服用時の注意点を解説」でも詳しく解説していますのでご覧ください。
エラワンの避妊効果
エラワンをはじめとするアフターピルには、妊娠を阻止する効果が期待できます。しかし、その理由のすべてがはっきりと解明されているわけではありません。妊娠を阻止できる理由として考えられているのは、おもに以下の2つです。
- 排卵を抑制する
- 子宮内膜の増殖を抑制し、受精卵の着床を阻害する
それぞれ詳しく解説していきます。
排卵を抑制する
レボノルゲストレルを主成分とするアフターピルの研究では、排卵前にアフターピルを服用することで、正常な排卵過程を阻害したとの結果が出ています。この研究を受けて、アフターピルの服用後5~7日間ほどは、排卵の可能性が低くなるとされています。また、性交によって射精された精子の寿命は約3~5日間です。その間に排卵がなければ受精そのものが成立しないため、アフターピルは避妊に有効であるといえるのです。
ウリプリスタル酢酸エステル(エラワン)も同様の仕組みですが、有効とされる時期がやや異なります。排卵とは、卵胞が十分に育って黄体形成ホルモン値の上昇(LHサージ)がピークに達し、卵子が排出されることを指します。レボノルゲストレルは、LH サージが始まる前の服用で避妊効果があるとされています。一方、ウリプリスタル酢酸エステルは、LH サージが始まる前と後で有用性を認められています。ちなみに、LHサージのピーク日には、どちらの薬を服用しても排卵は防げないようです。
子宮内膜の増殖を抑制し、受精卵の着床を阻害する
さらにアフターピルには、子宮内膜の増殖を抑制することで避妊効果があるのではないかとも考えられています。通常生理が起こると、卵胞期から黄体期にかけて受精卵が着床しやすいように、子宮内膜の増殖が見られます。アフターピルを服用すると一時的に子宮内膜の増殖が抑えられ、たとえ受精しても着床には至らず妊娠が成立しにくくなる、という理屈です。
しかしこの説は、まだ憶測の域を出ません。アフターピルは、副作用で出血が見られる例があるように子宮内膜に変化を与える可能性はありますが、避妊効果があるのかは明確になっていません。レボノルゲストレルは、着床への影響力は低いとの見方が主流のようです。一方、ウリプリスタル酢酸エステルに関しては、意見が分かれています。時間経過で効果の低下は見られない点から、着床の阻害、あるいは別の作用で排卵後も避妊効果があると予想されるものの、まだ立証できる結果は出ていないというのが現状のようです。
アフターピルは、排卵前の服用では効果の高さが認められています。しかし、受精卵の着床阻害は立証されておらず、すでに成立した妊娠を中断させることはできません。避妊をするためには、アフターピルをなるべく早く服用し、排卵を抑制することが大切です。
エラワンについてより詳しく知りたい方は、「アフターピル「エラワン」の効果や副作用を解説|気になる値段も紹介」もあわせてご覧ください。
エラワンを120時間以降に服用したら避妊効果はない?
エラワンを含むアフターピルは、性交後に早く服用すればするほど効果的です。
しかし、万が一推奨されている服用時間を超えてしまっても、まったく効果がないわけではありません。実際に、72時間以内の服用を推奨するレボノルゲストレルを主成分とするアフターピルは、服用が遅れても120時間までなら多少の効果は期待できるとのデータがあります。この結果から、推奨時間を過ぎても、避妊の効果は急に消失するわけではないといえます。
エラワンのリーフレットによると、120時間以内の服用を推奨しているのは、120時間つまり5日間は精子が生存する期間だからだと説明されています。性交後、120時間が経過した時点で、「すでに受精しているか、精子の受精能力が限りなく失われている」ことが予想されます。これは、「すでに排卵しているか、排卵を抑える必要性が低くなっている」状態でもあります。エラワンは、排卵の抑制による避妊を想定したアフターピルです。120時間という時間は、排卵抑制が避妊につながるのかという観点から設定されていると考えられるでしょう。
したがって、120時間内に服用すること以上に、排卵してしまう前に早期服用することが大切だといえます。
一方で、エラワンは性交後の時間経過によって効果に変化が見られないという特徴があります。排卵後や120時間経過後でも、避妊できる可能性は残されています。
精子の生存期間や排卵のタイミングなどは、個体差・個人差があります。そのため避妊が成功するかどうかは、推奨服用時間で区切って決定づけられるものではないのです。月経周期と服用タイミングを照らし合わせて、不安がある場合には医師に相談しましょう。
エラワンを飲んだあとに吐いたら避妊率が下がる?
エラワンを服用後に吐いてしまった場合は、服用してからどのくらいの時間が経ったかによって対応が変わります。あまり時間が経っていない場合には、薬が十分に吸収されていないことが考えられます。服用後すぐの嘔吐は、期待する避妊効果を発揮できない恐れがあるため注意が必要です。
嘔吐してしまったのが、エラワンを服用してから3時間以内であれば、再び1回分を服用しましょう。3時間を過ぎていたら、追加で服用はしなくてよいです。
もしエラワンの副作用による嘔吐が頻回であるようなら、ほかの薬や緊急避妊法が選択されることもあるため、まずは医師に相談しましょう。
アフターピル「エラワン」の副作用
エラワンの副作用は、症状や出現頻度に差が生じます。エラワンの副作用は、以下の通りです。
出現頻度 | 10人に1人ほどの割合 | 100人に1人ほどの割合 | 1,000人に1人ほどの割合 |
副作用 | ・吐き気
・腹部(胃)の痛みまたは不快感 ・嘔吐 ・生理痛 ・骨盤痛 ・乳房の圧痛 ・頭痛 ・めまい ・気分の変動 ・筋肉痛 ・腰痛 ・疲労感 |
・下痢
・胸やけ ・胃腸内のガス ・口渇 ・異常または不規則な性器出血 ・月経過多 ・長時間の月経前症候群 ・膣の炎症またはおりもの ・性欲の増減 ・ほてり ・食欲の変化 ・情緒障害、不安、興奮 ・睡眠障害、眠気 ・偏頭痛 ・視覚障害 ・ニキビ ・皮膚病変 ・皮膚のかゆみ ・発熱、悪寒、倦怠感 |
・性器の痛みやかゆみ
・性交痛 ・卵巣嚢腫の破裂 ・生理が異常に軽い ・集中力の低下 ・震え ・見当識障害、失神 ・目の異常な感覚、充血、光への過敏性 ・味覚障害 ・蕁麻疹 |
出典:PACKAGE LEAFLET: INFORMATION FOR THE USER ellaOne 30mg tablet ulipristal acetate|Perrigo company
上記の副作用は必ずしも表れるわけではなく、個人差があります。まったく副作用が見られない場合もあり、出現頻度はあくまで目安となります。
エラワンを含むアフターピルの副作用については、「「エラワン」を含むアフターピルの副作用と服用時の注意点を解説」でも詳しく解説しています。
アフターピル「エラワン」に関するよくある質問
この章では、アフターピル「エラワン」に関する以下の疑問について解説します。
- エラワンはどこで買えますか?
- エラワンなどのアフターピルの値段はいくらですか?
- エラワン服用後の避妊に失敗しても妊娠を阻止できますか?
- アフターピル服用後に消退出血がないまま生理が来ることはありますか?
- エラワンを服用できないケースはありますか?
上記以外の疑問や、エラワンを服用するにあたって不安がある方は、医師に相談しましょう。
エラワンはどこで買えますか?
エラワンを含むアフターピルを処方してもらうには、原則医師の処方箋が必要です。そのため、婦人科や産婦人科などの医療機関で受診するか、オンライン診療を受ける必要があります。
ドラッグストアでは販売されていません(2023年10月時点)。なかにはインターネットで販売されているものもあるようですが、医師が処方していない薬は安全性が保証されないため、おすすめできません。
アフターピルの購入方法については、「アフターピルはどこで買える?正しい購入方法と処方までの流れを解説」で詳しく解説しています。
エラワンなどのアフターピルの値段はいくらですか?
アフターピルは保険適用外であり、自由診療となります。そのためクリニックによって、費用には差が見られます。
アフターピルとして使われる薬のおおよその費用相場は、以下の通りです。
薬の種類 | 値段の相場 |
エラワン
エラ など |
8,000円~15,000円 |
ノルレボ錠
マドンナ など |
6,000円~15,000円 |
プラノバール | 4,000円~8,000円 |
なお当院では、以下のアフターピルを取り扱っています。
- ウリプリスタル酢酸エステル「Ella(120時間用)」:13,750円(税込)
- レボノルゲストレル「Madonna」:8,800円(税込)
アフターピルの費用相場を知りたい方は、「アフターピルの値段は?相場やおすすめの購入先をご紹介」も合わせてご覧ください。
エラワン服用後の避妊に失敗しても妊娠を阻止できますか?
アフターピルは、服用後に再び行われた性行為に対しては、妊娠のリスクを回避しないとされています。そのため、アフターピル服用後は正しく避妊して性交するか、性交自体を控えるのがよいでしょう。
アフターピルの服用後、望まない妊娠のリスクが発生した場合には、再びアフターピルを服用しなくてはいけません。原則アフターピルは緊急用ですので、何度も必要になる場合には、低用量ピルを使用するなどほかの方法を検討しましょう。
アフターピル服用後に消退出血がないまま生理が来ることはありますか?
アフターピルの副作用のひとつ消退出血は、人によって表れない方や、生理と同じタイミングで発生し気づかないケースがあります。消退出血は、生理が始まる前に見られ、出血が続く期間は2~3日ほどであることが多いようです。
避妊が成功したときに起こりやすいとしている説もあることから、消退出血がないと「妊娠しているのでは?」と不安になる方もいるかもしれません。
しかし消退出血を含む不正出血は、あくまでアフターピルの副作用として起こる可能性がある、というものです。エラワンでは100人に1人程度が、何かしらの不正出血が見られるとされています。レボノルゲストレルを主成分とするノルレボ錠では、出血の症状は多く、消退出血・不正出血あわせて約60%という割合です。
避妊の成功は、生理が来ることによって判断できます。生理予定日まで様子をみましょう。
なおアフターピル服用後は、ホルモンバランスが変化したりすることから、生理周期に誤差が生じる可能性があります。おおよそ予定日と同じですが、前後して生理が来ることも珍しくありません。もし予定日を7日過ぎても生理がこない、いつもの生理と様子が異なるといったことがあれば、婦人科などの医療機関で受診して、妊娠検査を受けましょう。
エラワンを服用できないケースはありますか?
医師が処方するアフターピルは、基本的に安全性が高い薬といわれていますが、以下に当てはまる方はエラワンを服用できない可能性があります。
- 重篤な肝障害がある
- 重度の喘息がある
- すでに妊娠している可能性がある
- ウリプリスタル酢酸エステルの薬を服用してアレルギーの症状が出たことがある
さらにエラワンには、飲み合わせに注意が必要な薬もあります。以下の薬を服用している方は注意が必要です。
- ほかの避妊薬(低用量ピルなど)や緊急避妊薬(アフターピル)
- てんかんの治療に使用される薬(プリミドン、カルバマゼピンなど)
- 結核の治療に使用される薬(リファンピシン、リファブチンなど)
- HIV の治療薬(リトナビル、エファビレンツ、ネビラピン)
- 真菌感染症の治療に使用される薬(グリセオフルビン)
- セントジョーンズワート(オトギリソウ)を含む漢方薬
上記の薬を服用している場合は、エラワンの効果が最大限発揮されないなどの影響が出る可能性があります。また、サプリメントでも成分によっては飲み合わせが悪いものがあるため、いつも飲んでいる薬があれば必ず医師に伝えましょう。
エラワンの避妊率は早く服用するほど高くなる|オンライン診療を活用しよう
エラワンは、性交後120時間以内の服用が推奨されているアフターピルです。性交後から服用までの時間が短いほど、妊娠のリスクは回避できます。望まない妊娠のリスクがある場合は、一刻も早くアフターピルを服用しましょう。
「家の近くに婦人科がない」「通院する時間がない」という方は、オンライン診療を受けるのも選択肢のひとつです。
当院では、オンライン診療にてアフターピルの処方が可能です。最短即日発送にも対応していますので、クリニック選びに迷っている方はぜひご利用ください。
参考サイト・文献
・ellaOne30mg tablet ulipristal acetate|Perrigo company
・アフターピルファクトブック|株式会社ネクイノ
・緊急避妊法の適正使用に関する指針(平成 28 年度改訂版)|日本産科婦人科学会
・Randomised controlled trial of levonorgestrel versus the Yuzpe regimen of combined oral contraceptives for emergency contraception. Task Force on Postovulatory Methods of Fertility Regulation
・Ulipristal acetate: review of the efficacy and safety of a newly approved agent for emergency contraception
・ECPファクトチェック|厚生労働省
・Immediate pre-ovulatory administration of 30 mg ulipristal acetate significantly delays follicular rupture|V Brache, L Cochon, C Jesam, R Maldonado, A M Salvatierra, D P Levy, E Gainer, H B Croxatto|National Library of Medecine
・ノルレボ錠1.5mg|あすか製薬株式会社
コメント