メトホルミンは、糖尿病の治療薬として使用されている薬です。体重減少にも効果が期待できるため、「メトホルミンダイエット」として最近注目されています。
では、なぜメトホルミンを飲むと体重が減少するのでしょうか。
この記事では、メトホルミンの体重減少効果やダイエット目的で使用する場合の注意点について解説します。
メトホルミンの正しい理解を身につけて服用していきましょう。
メトホルミンとは?
メトホルミンとは、もっとも多いタイプの糖尿病である「2型糖尿病」の治療に用いられる薬の一つです。
2型糖尿病は血糖値を下げるインスリンの分泌が低下したり、インスリンの働きが悪くなったりすることで、血糖値が慢性的に基準より高くなってしまう病気です。インスリンには、血液中のブドウ糖を細胞に取り込みエネルギーとして利用するのを助ける働きがあります。
メトホルミンはこのインスリンの効果を高めるとともに、肝臓からの糖の放出を抑えることで血糖値を下げるのです。
インスリン分泌を直接増やすわけではないため、単独で使用する場合、低血糖の副作用が少ないといわれています。
メトホルミンでなぜ痩せる?体重が減少する3つの理由
メトホルミンは糖尿病の治療薬として知られていますが、最近ではダイエット効果も注目されています。
ここでは、メトホルミンによって体重が減少する理由を3つご紹介します。
理由1.食欲の低下、満腹感が持続する
メトホルミンの服用により、食欲を抑える効果があることが知られています。
メトホルミンはインスリン分泌を促進するといわれる消化管ホルモン(GLP-1)の分泌を増やす作用があると言われています。このGLP-1は、満腹中枢に働きかけて満腹感を得やすくなるといった働きを持っているため、食欲を低下させることに繋がるのです。
そのため、食事量が自然に減少し、間食を控えられる効果が期待できます。その結果、摂取カロリーが減り体重減少への効果があるとされているのです。
理由2.血糖値・体脂肪を低下させる
メトホルミンには、血糖値を下げる効果があります。血糖値を下げるために分泌されるインスリンは、脂肪の合成や貯蔵を促進する働きも持っています。そのため、血糖値が高いと太りやすい傾向にあるのです。
メトホルミンを服用することで、肝臓で糖が作られるのを抑えたり、筋肉や肝臓で糖が利用されるのを促進したりし血糖値を下げます。その結果、インスリンの分泌が減り、脂肪の合成や貯蔵が抑制されるのです。
また、メトホルミンはAMPKを活性化することでエネルギー消費を促進。この作用により、糖や脂肪が分解されやすくなるため、体脂肪を低下させるとされています。
このように、メトホルミンは血糖値や体脂肪を低下させることで、体重減少に寄与すると考えられます。
理由3.筋肉量が維持できる
メトホルミンは糖尿病の治療薬としてだけでなく、筋肉の回復や維持にも効果があります。
最新の研究によると、メトホルミンには筋肉の老化細胞に働きかけ、炎症や線維化を抑制することで筋肉量の低下を防ぐことが報告されています。
ダイエット中は筋肉量が減ってしまうこともあるでしょう。
筋肉のなかでも特に骨格筋は、エネルギー代謝を増加させることが知られています。
メトホルミンを服用することで筋肉量を維持できれば、体重減少にもつながるのです。
メトホルミンの副作用
メトホルミンに限らず薬を服用していると大なり小なり副作用が表れることがあります。
副作用が全く出ない人が多い一方で、まれに重篤な症状が表れるケースもあるので注意が必要です。ここではメトホルミンの副作用について詳しく解説します。メトホルミン服用中に、ここで解説する症状が出現した際には、すみやかに医師に相談しましょう。
消化器症状(下痢、食欲不振、悪心、嘔吐など)
メトホルミンは、副作用として消化器症状を起こすことがあります。
具体的な症状として下痢や食欲不振、悪心、嘔吐などが報告されており、特に下痢は服用者の約40%にみとめられている頻度の高い副作用です。
消化器症状は、服用開始時や増量時に多く見られ、一時的なものであることが多いといわれています。服用を続けることで症状が治まる場合もありますが、症状がつらいとき、症状が持続するときには医師や薬剤師に相談してください。
また、メトホルミンの服用による消化器症状は、乳酸アシドーシスという重篤な副作用の初期症状として表れることがあるため注意が必要です
低血糖
メトホルミンは、単剤では低血糖を起こしにくいというメリットがあります。しかし、ほかの糖尿病治療薬と併用した場合、低血糖のリスクが高まるため注意が必要です。
低血糖とは血糖値が正常値よりも低くなることで、手足の震え、動悸、冷や汗、頭痛、目のかすみ、生あくびなどの症状が表れます。重度の場合は意識障害やけいれんなどを起こすことも。
メトホルミンを服用し低血糖の症状が表れたときには、速やかにブドウ糖を摂取するなどの対処が必要です。必要に応じて医師に相談し、適切な指示をもらいましょう。
肝機能障害
メトホルミンの副作用として肝機能障害があります。メトホルミンには、肝臓での乳酸やアミノ酸からの糖新生を抑制する作用があります。そのため肝臓に乳酸が溜まりやすくなり、肝機能障害が表れる可能性があるのです。
肝臓肝機能障害の症状として黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)があります。もともと肝機能異常のある人ではさらに数値が悪くなることもあるため、特に注意が必要です。
服用期間が長い場合、定期的に血液検査を受け、肝機能の値(AST、ALT、ALP、γ-GTP、ビリルビン)を確認することが望ましいでしょう。
横紋筋融解症
メトホルミンは副作用として、横紋筋融解症を引き起こすことがあります。横紋筋融解症とは、骨格筋が壊れて溶けてしまう状態のことです。
頻度は不明ですが、メトホルミンの服用により、筋肉痛や脱力感、CK(クレアチンキナーゼ)の上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症が表れます。
服用中は、横紋筋融解症の症状にも注意しましょう。
乳酸アシドーシス
メトホルミンの最も重篤な副作用として乳酸アシドーシスがあります。
乳酸アシドーシスになると、血液中の乳酸値が上昇することで血液が酸性に傾き、腹痛や嘔吐、呼吸困難や意識障害を引き起こします。
乳酸アシドーシスの初期症状は、消化器症状、倦怠感、筋肉痛、過呼吸などがあります。ただ、これらの症状は、メトホルミンの一般的な副作用と似ているため、区別が難しい場合もあり注意が必要です。
また、脱水によっても乳酸アシドーシスが引き起こされることもあります。発熱や下痢、嘔吐、食事摂取の不良などにより脱水状態になっているおそれがある場合には、メトホルミンの服用を中止し、医師に相談しましょう。
その他
そのほかにもメトホルミンの服用により、以下の副作用があることを理解しておきましょう。
- 血液:貧血、白血球増加、好酸球増加、白血球減少、血小板減少
- 過敏症:発疹、そう痒
- 腎臓:BUN上昇、クレアチニン上昇(腎機能障害)
- その他:めまい、ふらつき、全身倦怠感、空腹感、眠気、動悸、脱力感、発汗、味覚異常、頭重、頭痛、浮腫、ビタミンB12減少
メトホルミンの長期服用により、ビタミンB12が欠乏し貧血を引き起こすこともあります。メトホルミンを服用する際には、これらの副作用を理解し、医師と相談しながら適切に服用することが大切です。
メトホルミンをダイエット目的で服用する際の注意点
ここではメトホルミンをダイエット目的で服用する際の注意点についてお伝えします。
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以上のように、メトホルミンを服用する場合は、さまざまな注意点があります。医師の指示に従い適切に服用してください。
メトホルミンダイエットに関するよくある質問
ここでは、メトホルミンダイエットに関するよくある質問を紹介します。
- メトホルミンは糖尿病ではない人が飲んでも大丈夫ですか?
- メトホルミンで痩せる効果的な飲み方は?
- メトホルミンを服用できない人はいますか?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メトホルミンは糖尿病でない人が飲んでも大丈夫ですか?
メトホルミンは糖尿病治療薬です。血糖値を下げる効果のある薬ですが、単剤で使用した場合は低血糖をきたしにくいといわれており、糖尿病でない人も服用できます。
比較的副作用の少ない薬ですが、まれに重篤な副作用を引き起こす可能性もあるため、服用時には注意が必要です。メトホルミンを服用する際には必ず医師の診察を受け用量用法を守って服用するようにしましょう。
メトホルミンで痩せる効果的な飲み方は?
メトホルミンは他の糖尿病治療薬と併用することで、より高いダイエット効果が期待できることもあります。
たとえば、リベルサスと呼ばれるGLP‐1受容体作動薬は、インスリン分泌を促し血糖値を下げる効果があります。
リベルサスをメトホルミンと併用することで、より高いダイエット効果が期待できるケースもあるでしょう。
メトホルミンを服用できない人はいますか?
以下の症状や特徴にあてはまる人は、メトホルミンを服用してはいけません。
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これらにあてはまる人は、服用禁忌となっています。
服用禁忌でなくても、服用の際に注意が必要な薬や疾患もありますので、診察時には、既往歴や身体の状況などをしっかり医師に伝えるようにしてください。
メトホルミンダイエットは医師の指示のもと服用することで効果が期待できる
メトホルミンは、近年ダイエット目的で服用する人も増えています。
メトホルミンによって体重が減少する理由として、「食欲を低下させる」「血糖値や体脂肪を減少させる」「筋肉を維持すること」があります。
ダイエット効果が期待できるメトホルミンですが、まれに乳酸アシドーシスといった重篤な副作用を引き起こすこともあるので、服用に関して注意が必要であることも理解しておきましょう。
参考サイト・文献
・インスリン|e-ヘルスケアネット
・血糖値を下げる飲み薬「インスリンを効きやすくする薬」の項目|糖尿病情報センター
・2 型糖尿病治療におけるメトホルミンの使用実態に関する観察研究
・GLP-1の多様な作用 | 糖尿病サイト (club-dm.jp)
・ファルマシア・50巻・7号・695頁 (jst.go.jp)
・メトグルコ錠250mg/メトグルコ錠500mg (pmda.go.jp)
・メトグルコ適正使用のための服薬指導のポイント‐北里大学病院薬剤部長・厚田氏に聞く|薬事日報ウェブサイト (yakuji.co.jp)
・低血糖 | 糖尿病情報センター (ncgm.go.jp)
・rybelsus_guide_j.pdf (msd.co.jp)
・メトホルミンダイエットとは?ダイエット効果が期待できる3つの理由や飲み方などを解説 – NOVUS Beauty Clinic | ノバスビューティークリニック (nbc-clinic.com)
・Disuse-induced muscle fibrosis, cellular senescence, and senescence-associated secretory phenotype in older adults are alleviated during re-ambulation with metformin pre-treatment
・A COMMON DIABETES DRUG HAS A SURPRISING SIDE GIG: MUSCLE PROTECTOR
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