ダイエット目的で使用されることもあるメトホルミンとは、どのような薬なのかよくわからない方もいるのではないでしょうか。メトホルミンは糖尿病の治療として用いられており、血糖値を下げる効果が期待されている薬です。また、服用によって太りにくくなるとされているので、ダイエットの手段として利用されるケースもあります。
この記事では、メトホルミンの効果や副作用、使用時の注意点についてご紹介します。メトホルミンについて詳しく知ることで、ダイエット方法の一つの手段として検討できるようになるでしょう。
メトホルミンとは?
メトホルミンとは、血糖値(血液中の糖の濃度)を下げる効果があるとされている薬で、2型糖尿病の方に使用されています。
糖尿病の薬は、おもに以下のような種類の働きによって血糖値を減少させます。
- インスリンを出しやすくするもの
- インスリンの効き目をよくするもの
- 糖の吸収をおさえるもの
インスリンとは、体内の糖を細胞に取り込みやすくして、血糖値の上昇をおさえる働きのあるホルモンです。メトホルミンはインスリンの効き目をよくする薬の一つです。2型糖尿病になるとインスリンの効き目が悪くなりやすいので、その問題を解決するためにメトホルミンが使用されています。
メトホルミンによる5つの効果
メトホルミンの具体的な効果についてみていきましょう。
おもな効果としては、以下の5つです。
- 筋肉への糖の取り込みを促す
- 糖の生成をおさえる
- 糖の排泄を促す
- 食欲をおさえる
- AMPKを活性化させる
ここではそれぞれの効果を詳しく解説します。
1.筋肉への糖の取り込みを促す
1つ目は、筋肉への糖の取り込みを促す効果です。通常、筋肉を動かして血流が増えると、その分インスリンによって糖の取り込みが促進されます。しかし、糖尿病によってインスリンの効き目が悪くなると、うまく糖が取り込みにくくなります。
メトホルミンを使用して筋肉への糖の取り込みが促進されることで、血糖値を下げることができるのです。糖の取り込みが促進されることで糖尿病に対する運動療法の効果も高まり、さらに血糖値のコントロールがしやすくなるでしょう。
2.糖の生成をおさえる
2つ目は、糖の生成をおさえる効果です。
肝臓には、空腹になったときに蓄積しておいた糖を生成して、血糖値を一定にする働きがあります。糖尿病になると生成された糖の取り込みが難しくなるので、血糖値が上がりやすい状態を作ってしまいます。その状態で食事すると、さらに血糖値の上昇につながるでしょう。
メトホルミンにはインスリンの効き目をよくするだけでなく、肝臓から糖を作るのを防ぎ、血糖値を上げにくくしているといえます。
3.糖の排泄を促す
3つ目は、糖の排泄を促す効果です。
糖は通常、腎臓の働きによって体外へ排泄されることを防ぎ、再び血液中に戻ります。メトホルミンを服用すると体内にある余分な糖を、便と一緒に排泄しやすくなるとされています。
その結果、血糖値を下げられるのです。ただし、メトホルミンがこのような働きをするメカニズムは、はっきりとわかっているわけではありません。
4.食欲をおさえる
4つ目は、「GLP-1」の働きをサポートして食欲をおさえる効果です。GLP-1とはホルモンの一つで、胃の働きを抑制して糖の吸収を遅らせることで、満腹感を促す効果があるとされています。
メトホルミンによってGLP-1の分泌量が増えれば、服用によって食欲の低下にともない、食事量の減少が期待できます。糖の吸収もゆるやかになるため、急激な血糖値の上昇も防げるでしょう。
5.AMPKを活性化させる
5つ目は、「AMPK」を活性化させる効果です。
AMPKとは酵素の一つで、以下の働きがあるとされています。
- 糖や脂肪などのエネルギーの生成をおさえる
- 糖や脂肪などのエネルギーの分解を促進させる
このように、AMPKはエネルギーを必要以上に溜めこまないようにしつつ、消費しやすい身体に近づける効果が期待できます。メトホルミンはAMPKを活性化させる効果があるので、さらなる血糖値や体脂肪の低下につながります。
メトホルミンにダイエット効果がある?
メトホルミンは糖尿病への治療だけでなく、ダイエット効果もあるとされています。先ほど紹介したメトホルミンの効果は、糖尿病以外にもダイエットに関連したものも多いといえるでしょう。実際に、ダイエットを目的として使用する方も少なくありません。
ただし、メトホルミンは体重増加を防ぐ効果は期待できるものの、服用するだけでは痩せられるわけではない点に注意しましょう。状態によっては予期せぬ副作用を起こす可能性もあるので、使用時は医師とよく相談する必要があります。あくまでもメトホルミンは「糖尿病の薬」であることを忘れないようにしましょう。
メトホルミンの副作用
メトホルミンにはどのような副作用があるのでしょうか。ここでは服用時に注意したい副作用について解説します。
最も危険な副作用は乳酸アシドーシス
メトホルミンでみられる副作用で一番注意したいのが、「乳酸アシドーシス」です。乳酸アシドーシスとは、糖の生成がおさえられることによって乳酸が分解されず、体内に蓄積してしまう状態です。
乳酸が蓄積されることで体内の血液のバランスが崩れて、以下のような症状が表れます。
【初期症状】
- 吐き気
- 腹痛
- 下痢
- 倦怠感
- 筋肉痛
- 発熱
【末期症状】
- 過呼吸
- 低血圧
- 脱水
- 意識の消失
- 昏睡
また、重度の乳酸アシドーシスでは死亡するケースもあるとされています。特に肝臓・心臓に病気がある方や、乳酸アシドーシスの既往がある方は発症リスクが高まりやすいので、注意が必要です。乳酸アシドーシスの症状がみられた場合は服用を中止して、すぐに医師に相談しましょう。
そのほかの副作用
乳酸アシドーシス以外の副作用としては、以下の通りです。
- 消化器症状(消化不良、便秘など)
- 貧血
- めまい
- 空腹感
- かゆみ
- 発疹
- 脱力感
- 味覚障害
- むくみ
このように、メトホルミンではさまざまな副作用が表れる可能性があります。乳酸アシドーシスの初期症状に注意することはもちろん、これらの副作用が続くようでしたら早めに医師に相談しましょう。
メトホルミンを使用する際の注意点
メトホルミンの使用時にはいくつか注意したい点があり、場合によっては服用できないケースもあります。ここではその注意点について解説します。
メトホルミンを服用できない方もいる
以下に当てはまる方は、メトホルミンの服用ができません。
- 妊娠中や授乳中の方
- 乳酸アシドーシスの既往がある方
- 下痢や嘔吐などの胃腸障害のある方
- 脱水あるいは脱水状態の方
- 過度のアルコールを摂取している方
- 利尿剤を飲んでいる方
これらのほかにも、CT検査をする予定の方もメトホルミンの服用は避けましょう。CT検査で使用する造影剤の作用によって、乳酸アシドーシスのリスクが高まる恐れがあります。
「自分はメトホルミンを使用できるの?」と不安に感じている方は、医療機関で受診する際に医師に確認してみましょう。
ほかの薬の併用には注意
メトホルミンを服用する際に、ほかの薬の併用ができない場合もあります。
特に以下の薬との併用は避けるようにしましょう。
- アドレナリン:気管支喘息や咳などの治療薬
- ピラジナミド:結核の治療薬
- イソニアジド:結核の治療薬
これらの薬はメトホルミンの血糖値を下げる効果を弱めてしまう恐れがあります。
「リベルサス」をはじめとした、ダイエットに効果があるとされている薬との併用にも注意しましょう。メトホルミンの効果が弱まるだけでなく、低血糖をはじめとした副作用を引き起こす可能性があります。複数の薬を自己判断で併用するのではなく、必ず医師に事前に相談してください。
メトホルミンは市販で購入できる?
基本的に、メトホルミンは糖尿病の治療として、またはダイエット目的で医師が必要と判断したときにのみ処方してもらえます。それ以外の方法では、海外からの個人輸入であればインターネットで販売されている場合もあるでしょう。
しかし、インターネットで販売されているメトホルミンは品質や安全性が保証されているわけではありません。気軽に手に入れられるからといって医療機関以外の方法で購入すると、思わぬ健康被害にあう可能性があります。
メトホルミンを使用する際は市販・通販での購入は避けて、必ず医療機関で処方してもらうようにしましょう。
メトホルミンを使用する際は医師に相談を
血糖値を下げる働きが期待されているメトホルミンは糖尿病の治療だけでなく、ダイエット目的として使用されることもあります。しかし、メトホルミンはあくまでも太りにくくなるだけであり、飲むだけで痩せられるわけではない点に注意しましょう。
また、乳酸アシドーシスという危険な副作用が表れるケースもあり、ほかの薬の併用にも気をつけなければいけません。メトホルミンを使用する際は、医師に相談してどのような注意点があるのかをよく確認しておきましょう。
参考サイト・文献
・糖尿病とは|糖尿病情報センター
・糖尿病の運動のはなし|糖尿病情報センター
・アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」(1mL)|医薬品医療機器情報提供ホームページ
・薬剤科|奈良医療センター
・個人輸入メトホルミンの真正性と品質に関する研究と非破壊分析の応用|厚生労働省科学研究成果データベース
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